【僕の幼馴染はいじめられっ子】猪木洋平
僕はクラスで目立たない存在だ。
休み時間はいつも読書をして過ごしている。
そんなある昼休みのこと。
俺はいつものように本を読んでいたのだが……何やら教室が騒がしい。
「きゃはは! こいつすっげー暗い顔だな!」
「おい、もっと笑ってみろよ」
「…………」
「あれ? どうしたのかなぁ?」
「無視かよ、つまらん奴め」
クラスメイトたちの声に目を向けると、そこには数人の女子生徒がいた。
いわゆる不良グループというやつだ。
彼女たちは一人の女子生徒を囲んでいる。
(真里ちゃん……。大丈夫かな……)
その中心にいる少女の名は朝倉真里。
俺と同じクラスであり、俺の幼馴染でもある。
彼女は肩口で切りそろえられた黒髪がよく似合う寡黙な女の子だ。
不良グループから見れば、確かに暗くてつまらない奴に見えるだろう。
だがそれは違う。
真里ちゃんはとても優しい子なのだ。
困っている人がいれば手を差し伸べるし、迷子の子供がいれば親を探してあげるような心の持ち主だ。
ちゃんと見れば可愛いし、俺を始めとしてクラスの男子にも隠れファンは多いはずである。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ」
不良グループのリーダー格らしき女子生徒がそう言うと、真里ちゃんの腕を掴んだ。
「あ……」
「あんたってさぁ、調子に乗ってるよね」
「……え?」
「しらばっくれてもムダ。アタシの彼氏を誘惑しておいてよく言うわ」
リーダー格の少女の言葉を聞いて、周囲の生徒たちの視線が鋭くなる。
「そ、そんなことしていない……。離して……」
真里が抵抗するが、不良少女の方が腕力が強いのだろう。
振りほどけていない。
「いい加減にしなさいよ」
すると今度は別の女生徒が真里ちゃんの髪を掴んで引っ張った。
「痛い……」
「アンタが悪いんだからね?わかってんの?」
「……」
「何とか言えよ」
さらにもう一人、別の少女が真里ちゃんの顔を平手で叩いた。
バシッという音が響く。
「うぅ……」
頬を押さえて涙ぐむ真里ちゃんを見て、俺は動揺する。
他のクラスメイトたちも、何事かと興味深げに見ている。
しかし、止める者はいない。
不良グループに逆らえば何をされるかわかったものではないからだ。
今この場にいるのは不良女子だけなので、ギリギリ何とかできなくもない。
だが、彼女たちのバックには暴走族や半グレ集団といった反社会的勢力がついているという話もあるのだ。
ここで俺が出て行っても余計な火種になるだけだ。
(くそ……何もできないのか?)
俺は歯噛みした。
こんなときに限って担任の教師は不在だ。
真里ちゃんは弱々しくされるがままになっている。
「反省の色が見えないみたいだけどぉ」
「仕方ねぇな」
リーダー格の少女がニヤリと笑う。
そして……。
「じゃあさぁ、みんなに見てもらいましょうか」
「え?」
真里ちゃんが不思議そうな表情を浮かべると、リーダー格の少女は真里ちゃんのスカートを捲り上げたのだった。
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